第2回カルレバーロ奏法実践講座/パルス・トレーニング講座

5月11日(日)、第2回 カルレバーロ奏法実践講座/パルス・トレーニング講座が開催されました。

内容をご紹介します。

【カルレバーロ奏法実践講座】

まずは、前回の復習から。「脱力のための柔軟体操」をした後、下半身でどっしりとした支えを作ることをもう一度確認します。

立っているときは足を意識しやすいものですが、座ってギターを構えてしまうとどうしても足にまで気が回らず、指先ばかり気になってしまいます。そうではなく、 常に足から頭まで身体全体を統一的に意識することが必要。まずは、身体の土台をしっかりと感じることです。ピアニストのマリア・ジョアン・ピリスも、ピアノの響きを作るのは下半身だと言っているそうです。指先だけの演奏は、浅い響きになります。

さて、第2回のテーマは「腕の重さを利用した左手のポジション移動」です。

左手のキュッというノイズ、気になりませんか?このノイズを出さないことが、カルレバーロ奏法の一つのテーマです。1970年代の半ば頃、それまでとは全く 異なったテクニックを持った南米のギタリスト3人がヨーロッパのコンクールを制覇しました。その3人とは、R.アウセル、E.フェルナンデス、A.ピエッ リ。彼らの演奏には、これまであって当然だった左手のノイズがありませんでした。彼らは皆A.カルレバーロに師事していました。

自分が出しているノイズが聴こえていなければ、ノイズを消すことはできません。ノイズは出ていますか?どの瞬間にノイズが出ているでしょうか?自分の手の動きを確認して、ノイズが出ない動きを探ります。どのように弦から指を離すか、それが問題です。

もちろん、指だけの動きを考えていてはいけません。指1本1本に意識を向けてなんとかバラバラに動かそうとするのではなく、手は脱力したときと同じアーチ形にしたまま1つのブロックのように意識し、腕が落ちる動きに合わせて手全体を次のポジションに移動します。

1本1本の指を強化することを目指したスペインの伝統的奏法に対して、腕から指までの全体を自然な形の統一したものとしていかに"楽をして"弾くかを追求したカルレバーロ奏法。カルレバーロ奏法は、特別な強化トレーニングを必要としないため、大人になってからギターを始めた方にも向いているのだそうです。

今回は初の試みで、先生の左腕をビデオカメラを使ってスクリーンに映し出しました。こうすることで、演奏者の視点で腕の動きを見ることができます。マンツーマンのレッスンで、先生のお手本を目の前に見ているようです。

 

【パルス・トレーニング講座】

パルスとは、演奏家の内に備わっていて、演奏を内側から支えるもの。パルスのある演奏は、聴衆に伝わり、聴衆を惹き込みます。

今回はまず、2人の名演奏家の演奏を聴き、パルスとは何かを再度確認しました。

レオンハルト バッハ≪メヌエット≫ スカルラッティ≪ソナタK.209≫≪ソナタK.208≫ ラモー≪かっこう≫ / フルトヴェングラー指揮ベルリンフィルハーモニー管弦楽団 ブラームス≪交響曲第3番第3楽章≫

レオンハルトの非常に強固なパルスは、どんな速度になってもどんな音形になっても崩れることはありません。フルトヴェングラーのブラームスは、3拍目のアウフタクトを歌うドイツ的な演奏。アウフタクトへの入りが2拍目を食って少し早めになったり、2拍目で外へ広がりながら大きく歌ったり。ロマン派の音楽の自然な揺らぎをパルスが見事に内側から支えています。両者の演奏に共通するのは、1拍目がはっきりとわかること、1拍目を予感できること。聴衆は次をつい想像し、惹き込まれ、演奏に飽きることがありません。

名演奏の根底に流れるパルスを手本に練習です。メトロノームを裏拍に、まず3拍子「1、2、3」を作ります。その3拍子に、テキストの音符を手拍子で入れていきます。

日本人にありがちな「1、1、1」の1拍子にならないこと(頭が1拍子毎に揺れていてはだめ)。1拍子に重きを置いて、聴衆にはっきりと1拍目が分かるようにすること。1小節先、できればもっと先までを考えること。

自分が何拍子を弾いているのか考えずに演奏している人は多いのではないでしょうか。テクニックはあるのにつまらない演奏、いま一つ何かが足りない演奏等々、自分の演奏に悩んでいる方にパルス・トレーニングを強くおすすめします!

次回は5月25日。乞うご期待!