ビブリオテカ・アルモニア発見!

 崩落寸前の編集部の書棚を整理していたら、紙袋に収められた古い楽譜の束が出てきました。茶色く変色した表紙にはソルやタレガのよく見る顔写真や手書きイラストが置かれ、BIBLIOTECA ARMONIA MUSICA PARA GUITARREと印刷されています。アルモニア譜庫 ギターのための音楽 の意味です。アルモニアは仙台の澤口忠左衛門氏(1902-1946)の主宰したギター雑誌で、会員向けにギター譜を印刷して販売していました。戦前のギター楽譜収集家として、澤口忠左衛門、中野二郎、武井守成の三氏が挙げられますが、自らのコレクションを印刷して同好の士に提供していたのは澤口氏だけでした。

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 表紙はイラストが何種類かありますが、曲名と作曲者名がなく、ビブリオテカ・アルモニアでの整理番号がスタンプで打たれているだけ。それで裏表紙を見ると......

 

 ビブリオテカ・アルモニアの曲目一覧が載っています。その中の赤線のアンダーラインが引かれているのが該当作品ということになります。いわゆる共通表紙で、いちいち表紙を印刷する必要がありません。

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  印刷は昭和16年4月15日。この頃ヨーロッパではナチス・ドイツが侵攻を開始、12月には太平洋戦争開始となり、日本も戦禍に巻き込まれる、大変な時代の幕開けの頃です。

 曲目を見ると、約半数が今日も弾き継がれている作品、残りの半数が今では知られざる作品です。では中身を見てみましょう。タレガの〈ダンサ・モーラ(ムーア風舞曲)〉。

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 どうも見覚えのある譜面です。調べてみると、1908年~1920年にスペインのイルデフォンソ・アリエル社から出版された初版譜そのもので、冒頭にB33という整理番号と末尾にEd. ARMONIA, Sendaiという文言を付け足しています。現代では著作権法違反ですが、当時はそのような認識はなかったのかもしれません(今の中国と同じですね)。むしろ貴重な海外の文化を広めようという善意が強かったかもしれません。

 澤口氏は戦中に病魔に侵され、1946年、敗戦の翌年に逝去されました。享年45歳。その後、研究誌『アルモニア』全巻をはじめ、ギター音楽に関する内外の文献、音楽雑誌、輸入楽譜および邦人によるギター譜、レコード、写真、書簡、日記などは仙台市文学館に保存されているが、非公開とのことです。

 追記:表紙はスペイン語表記なので、GUITARREはGUITARRAとすべきでした。残念!