三種の神ギター
ジョン・ダウランドのリュート曲はダイアナ・ポールトンのダウランド全集の100曲に、新たに複数のCDに加えられた14曲を加えて114曲あります。それをエクセル・ファイルにしていろいろ条件を加えていくと、面白い発見があります。
ダウランドはルネサンス・リュートを弾いていましたが、この楽器は6コースから9コースまで、さまざまです。各曲の使用コース数を入れてみると、以下の結果となりました。
6コース:59曲
7コース:46曲
8コース:5曲
9コース:4曲
6コースはギターでまったく問題なく弾けます(3弦を半音下げてカポを3Fに)。
7コースは最低音が6コースの4度下のD、ギターの6弦を1音下げたDと同じです。
8、9コースは後期の作品で真偽が疑われている曲が多いのでオミット。
ということで、7コースの作品をなんとかすれば、ギターでダウランドのリュート曲ほぼすべてを弾けるのです。そのための手段は2つ。7コースの音をオクターヴ上げるなりオミットするなりして、6弦で弾ける譜面にする。もう1つは7弦で普通より短3度高い調弦の(つまり7コース・リュートとおなじ)ギターを作る。
後者には別のメリットもあるのです。1)そのままでビウエラの曲が弾ける。2)3弦を半音上げてB♭にするとテルツギターの楽譜をそのまま弾ける。
ルネサンスリュート、ビウエラ、テルツギター。これはギター系古楽器の三種の神器、神の器は神の楽器、すなわちギターではありませんか! バロックリュートまで入れば完璧なのですが、11弦ギターになってしまいます。(そうか、セルシェルの弾いているボリーン製作の11弦ギターは四種の神器でもありうるわけだ!)
ところが、三種の神ギターなんてどこにもありません。それなら自分で作ってしまいましょう。
ということで設計図を作りつつ、夏はパーツの準備、秋の乾いた季節に一気に接着、仕上げにはいる、というのが目下の予定です。
製作は禰寝孝次郎著「スペイン式クラシックギター製作法」に準拠して、組立型から作ります。組立型に使ったのは、昔ギター・キットを作った際の外型を切り抜いた内側のベニヤ板。小型だから廃品利用ができます。
等高線の中心が外より3ミリ凹んだ窪みを、四方反りカンナで削っていきます。
全体をランダムサンダーで削ります。これは型作りには便利ですが、ホコリが凄いので屋外で。
現状ここまでです。また進展があったらお見せします。(編集部:中里精一)