GGサロンコンサート・新シリーズ始動!

今年のGGサロンコンサートも残すところあと3回となりましたね。いずれも聴きどころ満載の公演ですので、皆様ぜひお越しくださいませ!

さて、2014年のGGサロンコンサートでは、これまでと少しだけ趣向を変えた新シリーズを行ないます。先日のローラン・ディアンスの東京公演でチラシをお配りしたので、すでに目にされた方もいらっしゃると思います。その名も「ギター名曲講座」! 基本的に毎月最終土曜日(たまに日曜日)の15時開演で行ないます。入場料は従来のコンサートと同じです。チケット発売日が公演の2ヵ月前というのも同じです。さらにこのシリーズ、雑誌&HP連動なのですが、その内容はと言うと......。

と、その前に、このシリーズを始めることとなったきっかけをお話ししておきますね。
(長くなるので、「そんなの知りたくない!」という方は「チラシのコピーにもある通り」まで飛ばしてください!)

一番根っこにあるのは「現代ギターでしかできないことをやりたい!」という思いでした。GGサロンコンサートでは各地でご活躍されているギタリストの方々に出演していただいていますが、それは逆に言えば、必ずしもGGサロンで聴く必要はないということですね。同じ東京だけでも素晴らしいコンサートホールがたくさんあるので、もしかしたらそういう会場で聴いた方が演奏をより楽しむことができるかもしれません。では、GGサロンでコンサートをやる意義はいったい何なのでしょう?

現代ギターの一番の強みは「クラシックギターのことにやたらと詳しい」ことです。毎月マニアックな雑誌を発行していますし(笑)、楽譜もたくさん置いていますし、素晴しいギタリストの方々とお付き合いさせていただいています。その点に関しては、どこの出版社にも、音楽事務所にも、音楽ホールにも負けません。そんな現代ギターができることは何か、いろいろと考えました。そこで出た結論がずばり、「実力のあるギタリストに、その実力を存分に発揮していただく」ということでした。現代ギターならではの企画を組み、そのギタリストでなければできないプログラムを実現していただくということです。

骨のある企画を継続的に立て続けるというのは、簡単なことではありません。前提としてさまざまなレパートリーに関する知識がなくてはいけませんし、どんなギタリストがどんな曲を弾いているのか、弾いていないのか、把握していなくてはいけません。さらには、シリーズ内でコンセプトが被らないように調整しながら進める必要があります。そして主催者として常に考えなければいけないのが、「それでお客さんが来てくれるのか」ということです。

実を言うと、愛好家の方々に喜ばれるような本気度の高い企画を組むことは、集客という面では必ずしも良い影響をもたらしません。本当に自分の趣味に関わることだと、多くの方はおひとりでお越しになるからです。それよりも、ご家族やご友人を誘いやすい内容の方が、お客さんは2倍、3倍になるのです。そういう理由もあって、一般のコンサートでは、なるべく親しみやすい内容にすること、"ウケる"曲を入れることが大切になってきます。クラシックギターの魅力をより多くの方に知っていただくという意味では、とても大切なことです。

ですがそういう公演ばかりになってしまうと、すでにクラシックギターの魅力の虜になっている方にご満足いただくことはできません。おそらく、現代ギターに注目してくださっているのは、そのような方々が多いのではないかと思います。だったら、現代ギターこそが、愛好家の方々とともにクラシックギターの魅力をより深く掘り下げていく役割を担うべきではないかと考えました。そうして誕生したのがこの「ギター名曲講座」シリーズです。

チラシのコピーにもある通り、このシリーズのコンセプトは「知性と感性を刺激する」ことです。ですがそれが意味するのは、ウンチクを身につけることでも、教養主義的に振る舞うことでもありません。

ギターに限らず、クラシック音楽というジャンルは過去に書かれたたくさんの作品、その遺産で成り立っています。私達とは違う時代に成立した作品を味わうことに、いったいどんな意味があるのでしょう? 即興を得意とするジャズやフラメンコ、共感のできる同時代の音楽を聴くこととは、何が違うのでしょう?

クラシック音楽を聴くというのは私にとって、「世界を楽しむ」ということを意味します。クラシックギターには、(あくまで現時点までで)完結した1つの世界があります。その世界を数百年単位で見るか、ここ200年で見るか、それとも100年程度か、スペイン音楽の産物として見るか、中南米音楽の活況とともに見るか、かつて栄えた19世紀の歴史の中で見るか、それらすべてを包括して見るか、人によって見え方はまったく異なると思いますが、ここに挙げきれないほどたくさんの物語を宿し、それぞれの人の頭の中で1つの世界として成り立っています。さまざまな時代、さまざまな地域の中でたくさんの人々によって築き上げられてきたその広大な世界を、聴き手が想像力を駆使しながら、音にして楽しむことができるというのが、クラシック音楽の醍醐味の1つだと私は考えています。

というわけで、「ギター名曲講座」シリーズには、毎回必ず何らかのコンセプトがあります。コンサート単体で考えるとそれらはひどく視野の狭いプログラムに見えるかもしれません。ですが一年を通して見ていただけば、クラシックギターがいかに広大な世界を持っているかを実感していただけると思います。各公演のコンセプトと内容はこのブログと現代ギター誌で解説していきます。ブログと現代ギター誌で解説したプログラムを、そっくりそのままコンサートで弾いていただく、というふうに考えることもできると思います。

第1回は鈴木大介さんの奏でるバリオス! 大介さんと言えば楽譜『バリオス選集』シリーズでもお馴染み、バリオスの大得意なギタリストですが、オール・バリオス・プログラムはそうそうないと思います。今回はさらに、全曲を名器フレタで弾いていただきます! 昨年行なったとあるコンサートと似ていますね。詳細は来月20日ごろお伝えしますので、どうぞお楽しみに!

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第2回は2月23日(日)、藤元高輝さんに「引用の音楽?20世紀作曲家の試み」というタイトルで出演していただきます。どんなプログラムだか想像できますか? ヒントはブリテン〈ノクターナル〉、武満 徹〈フォリオス〉、ブローウェル〈ソナタ〉......。超重量級のプログラムになること間違いなしですので、乞うご期待!

第3回は3月29日(土)、益田正洋さんとフルーティストの難波 薫さん、ヴァイオリニストの井上静香さん(今回はヴィオラで!)に、「ウィーン古典派の室内楽」を弾いていただきます。驚くべき豪華な出演陣! ウィーン古典派はディアベッリやマティーカをはじめ、演奏機会が少ないながらもギター室内楽の宝庫です。「え、益田さんソロじゃないの?」と思った方、ご安心ください。9月公演でバシッとソロもキメていただきます!

その他、第4回以降も順次お知らせいたしますので、ぜひぜひご注目ください!

(編集O)