第1回 カルレバーロ奏法実践講座 パルス・トレーニング講座

第1回 カルレバーロ奏法実践講座 パルス・トレーニング講座が、4月20日(日)に開催されました。

早くも定員締切とさせていただいた期待の講座で、当日に聴講をお申し込みいただいた方もあり、会場はいっぱいとなりました。GGサロンがいつもに増して手狭に感じられました。

第1回は、各講座とも「それがどういうものなのか」「何を目指すのか」と言う導入から始まり、最初の1歩くらいまで。ここからだんだんと本格トレーニングに移っていきます。おそらく、受講生の皆さんの多くは「こんなにみっちり基礎を見直したことはない」と思われるはず。第2回が待ち遠しい限りです!(私も受講生として参加したいです!)

なお、第2回以降、若干ですが空席がございますので、興味を持たれた方はぜひご相談ください。

さて、第1回目の各講座を簡単にご紹介します。

【カルレバーロ奏法実践講座】

まずは、「カルレバーロ奏法とはどういうものか」「この奏法を使うことで何を目指すのか」と言うイントロダクションです。

「奏法の基本原則は『手、腕に余計な緊張を持たせないこと』。このことで、長時間の演奏も無理なく続けられるようになり、さらに手、腕の滑らかで自然な動きは、深く柔らかい音、表現力に富んだ音を作り出すことにつながる。」

第1回目の実践は「脱力のための柔軟体操」でした。これは、ピアノの巨匠アルフレッド・コルトーの弟子で90歳まで現役で演奏活動をしたタリアフェロという人が考案した体操とのこと。肩、肘、手首の脱力した状態を身体に覚えさせるためのトレーニングです。

「前屈して腕から先の力を抜き、前後、左右と揺らす。そして腕が肩から紐でぶら下がっている棒のように、振り子のように自然に止まるまで放置する。次はメトロノームに合わせて肘を素早く曲げたり伸ばしたりしつつ、手首から先が勝手に揺れるにまかせる。」

 

そして、構え方。構えるのに重要なのは下半身。座らずに立った状態で、足でしっかり立つ感覚を掴みます。

「床下に口を開けて自分を吸い込もうとしているモンスターがいることをイメージして、それに引っ張り込まれないように抵抗するように、踏ん張って立つこと。足の裏全面で床をしっかり感じる。この状態を意識して座る。引っ張り込もうとしているものを、太陽の表面温度と同じ6000度で極度に高圧の地球の核でイメージしてもよい。イスの端に浅く腰を置き、骨盤を立てて座る。」

 最後に、テキストの課題の和音を弾きました。右手のトレーニングです。

「腕、指に偏った緊張を与えないこと。左手は手首から指にかけてアーチ型にし、右手は指先だけではなく、指の付け根から動かすこと。」

指の付け根の関節から動かすための基礎トレーニングも紹介されました。左手のトレーニングに移っても、右手がおろそかにならないよう自主トレーニングが必要です。

 

【パルス・トレーニング講座】

「パルスとは何か」 楽典に載っているものでも、リズムの言い換えでもありません。そういうものを超えた音楽にとってもっと本質的なものが谷辺先生の言う「パルス」です。パルスは演奏家を内側から支えます。そして、パルスがある演奏は、聴き手を捉え、聴き手の心の中に深く刻まれていきます。

今回は、そのパルスを知るために、3人の名演奏家のCDを聴きました。

ピアソラ   自作モダン・タンゴ / レオンハルト  バッハ 《無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第3番プレリュード / リパッティ ショパン《ワルツ cis-Moll》

ただただ圧倒されるばかりの名演奏。最初は微動もせず座っていた皆さんですが、先生の解説を聞き演奏を聴き進めるうちに、演奏に合わせて身体が静かに動いてしまいます。

 「ピアソラのタンゴのパルス。アウフタクトから1拍目への感覚、そして1拍目の重さ。レオンハルトの堅強なパルス。同じ音形の長い連続でも、崩れることなく刻み続けられる。リパッティの見事な揺らぎ。パルスがあることで、聴き手が次の音を予感し、決して独りよがりになっていない。」

パルスを実感として理解してから、トレーニング開始です。日本人にとって一番難しい3拍子から取り掛かります。

「メトロノームの音を裏拍にとる。『one two three』と声に出し、自分の中のパルスを作ってから、そこにテキストの音符を乗せていく。」

これがなかなか難しいのです。メトロノームの音がだんだんずれ、音符がずれ...。私もトライしてみましたが、一人で落ち着いてやってみてもなかなか思うようにいきません。

ただし、くれぐれも言っておきたいのは、これはきちんと裏拍を取る練習ではない、メトロノームのようにリズムを刻む練習ではない、ということです。演奏を身体の内側から支えてくれるパルス、その真意を理解してこそのトレーニング、貴重な機会です。この講座を通してどこまで成長できるか、とても楽しみです!

さて、第2回目はどうなるか。乞うご期待、です!