キュレーションの時代



みなさんは筑摩書房から出版されている『キュレーションの時代――「つながり」の情報革命が始まる』という新書をご存知ですか? 『電子書籍の衝撃』というベストセーラーで知られるITジャーナリストの佐々木俊尚さんの本で、今年2月に発売され話題になっています。情報社会とメディアの関係について書かれていて、個人的に興味があって購入したのですが……なんと!この本に現代ギターが登場!(47ページあたり)他にもジスモンチやアサド兄弟など、ギター愛好心をくすぐるような固有名詞が出てきます。というよりジスモンチについてとても詳しく書かれています。驚きました。すごく驚きました。驚きのあまり近所の本屋でひっくり返りました。ちなみに今日はエイプリルフールですが、ひっくり返ったこと以外は全部本当のことですよ!(笑)

現代ギターが登場するからというわけではありませんが、期待以上に興味深い内容でした。クラシックギターというあまり大きくない世界がやはりマス消費とは違った文脈で動いるからか、うなずける部分が多かったです。同時に、クラシックギターの魅力を、それを知らない人たちに伝えるにはどんな方法があるのか、とても考えさせられる部分が多かったですし、参考にもなりました。これからの自分の行動の指針の1つになりそうです。

ところで「キュレーション」という言葉、音楽でよく使われる「アーティキュレーション」という言葉に似ていますね。カタカナにするとそっくりなだけで、原語では“curation”と“articulation”でまったく別の言葉なようですが、なんとなく共通するものを感じます。どんな意味なのでしょう? 『キュレーションの時代』の冒頭では、こう定義されています。

キュレーション【curation】
無数の情報の海の中から、自分の価値観や世界観に基づいて情報を拾い上げ、そこに新たな意味を与え、そして多くの人と共有すること。

アーティキュレーションは「音のつながりに表情を与え旋律を歌い分ける演奏技術」のことですが、上の定義の〈情報〉を〈音〉に置き換えると、なんとなく通じませんか? こじ付けに聞こえるでしょうか?(笑) でもいわゆる「良いアーティキュレーション≒演奏」というのは、まさにこういうことではないかと思います。音楽、とくに譜面を重視するクラシック音楽においても、楽譜(情報)だけでは作品として成立しません。情報を音に変換し、その音楽を「魅力的に」演奏する人がいて、初めて作品として世に出回るわけですね。どんなに言葉を尽くして魅力を語っても、誰も弾いて(聴いて)くれなければ音楽は伝わりません。魅力的な演奏そのものがある種のキュレーションを含むわけです。だからこそ逆に、言葉を尽くして良い作品の魅力を語り、弾いてくれる、そして聴いてくれるかもしれない人たちに向けて働きかけてその作品を知ってもらうこと(つまりキュレーション!)も大切なのだと思います。まさに現代ギターの役割の1つですね。その意味で、この本の内容はとても身近に感じられましたし、刺激されるものでした。

ちょっと込み入った内容のエントリーになってしまいましたが、興味もたれた方は『キュレーションの時代』、一度お手にとられてみてはいかがでしょう? オススメです!

(編集O)